「どこの国でもそうであるが、もともと官僚組織は本来、人民のために存在すべきものであるにもかかわらず、時代の経過と共に主客逆転して、官僚の方が主になり、官僚の存在のために人民が使役されるようになる。
すると官僚組織の間に、本来何らの役にも立たない夾雑物が入り込んで寄食し、官僚組織を重くすると共に、最後にはそれが動けないようにしてしまう。こうなると人民は官僚の存在を全く迷惑な厄介物と考えざるを得ない。北宋の末期がそうであった」p95


「東部内モンゴルの臨潢、現今の遼寧省林西県(現在は内モンゴル自治区)から起こった契丹民族の遼」p115


「行政、立法、司法の三権の外に、監察権、考試権の分立が必要であり、しかもこれは歴代の中国政府が既に実施していた所である。監察は官吏の非違を弾劾することで、西洋では立法院で行う習いであるが、これは立法とは趣旨が違う。中国では古来、行政と別系統の御史を置いて弾劾を司らせるがこの方が本筋であるとする。
考試は官吏の資格認定で、西洋流では行政府が実施しているが、これは筋違いであり、中国では古来、科挙の制度を始め、独立して実施しているのが正しい方法だと唱える。彼(孫文)によれば完全なる政府は、この五権分立の形態を具えた政府でなければならぬのである」p288


1978年6月に岩波全書として刊行


この本をアマゾンで購入