
Kazuo Iwamura / 作
Susan Bolling / 訳
1987 Skandinaviska bokförlaget (Gävle)
『ぱろ・ぴこ・ぽろの ゆうだち』 1986 至光社
上記絵本を改題 『ゆうだちのともだち』 2002 至光社(国際版絵本―こりすのシリーズ)
いわむら かずお (岩村 和朗)・作
1939東京都生まれ。 東京藝術大学工芸科卒。 1975栃木県芳賀郡益子町に移り住み、1998栃木県馬頭町(現・那珂川町)に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館。
今回は、いわむら かずお の『ぱろ・ぴこ・ぽろの ゆうだち』、『ゆうだちのともだち』のスウェーデン語版です。
まずは、名前のことから。 子リス3匹の名前が、ぱろ・ぴこ・ぽろから Nisse, Stisse, Nina に名前が変わっている。 リス家族の名は、Nötberg (Nut mountain)と名が付けられている。 そして、もともと原作では名前のなかったカエルと子ウサギ、ネズミの兄弟にも名前がつけられている。
カエル→ Grodan Gröning (Frog Green)
子ウサギ→ Konrad Kanin (Konrad Rabbit)
ネズミの兄弟→ Monika, Mauritz
また、原作では、単に「もり」としか書かれていなかったものが、 Mörka skogen (Dark forest)と名付けられている。 スウェーデン語版では、登場人物や地名すべてに名前がついていないと気が済まないようだ。
では、違いを見ていくことにしましょう!
・ まず、日本語原作とスウェーデン語翻訳版を比べてみると、日本語原作は、自然情景を描くことに優れている事に気付かされます。 例えば、ラストシーンでは、スウェーデン語版の場合、ネズミたちが「明日もまた会おうね」と言って終わるのですが、日本語原作では、「もりで かなかなぜみが なきはじめました」というように自然情景が効果的に挿入されています。
「はっぱから しずくが ぽと ぽと おちてきます。 ねずみの おんなのこの めからも、 しずくが ひとつ おちました」(p20)など、自然と登場人物との融合がとてもうまく描かれていて、実に詩的な情景です。
また、日本語原作では、「あめに うたれて、くさたちも おおさわぎです」(p6)、「あめが うなりました」、「きのはが あめの なかで おどっています」(p14)のような自然の擬人化が多くなされていますが、スウェーデン語版ではそのような表現は難しいためか、すべて省略・割愛されていたり、絵に描かれている登場人物たちの行為、表情から訳者がセリフを作り出したりしています。
・ 一方、スウェーデン語版では、絵から内容をくみとった登場人物の性格描写に非常にすぐれています。 また、日本語原作では、子リスはポロの名ばかりが登場し、ポロが主役のようなのですが、スウェーデン語版では3人でうまく役を分け合っています。
例を挙げると、
1. 原作では、穴の中にいたネズミに、「きみたちも あまやどり?」と聞いたのが誰なのかわかりませんが、スウェーデン語版では stisse が Blev ni också våta? (「君たちも濡れたの?」)(p10)と尋ねたことになっています。
2.スウェーデン語版では、雨が上がった後、顔を出して Det har slutat att regna.(「雨がやんだよ」)(p18)と言うのは Nisse になっているが、原作にはこのセリフはない。 実は、絵で顔を出しているのはポロ( stisse )なのだが・・・。
3.原作では「みんなで しーそーを やろう」(p20)と言うのもポロだが、スウェーデン語版では Nisse と Stissse の二人ということになっている。
4.原作では、子ウサギが自分で穴に駆け込んできたことになっていますが、スウェーデン語版では、 Nina が困っていた子ウサギ Konrad に気付いて、 Kom hit fort! (「早く、こっちよ!」)(p13)と呼びかけて、 Konrad を助けているような印象を受けるシーンに仕上がっている。 また、原作にはまったくないのに、スウェーデン語版では、 Nina がネズミの女の子 Monika を(p20の絵のように)気遣っているセリフがある。 このように、 Nina は他人を思いやるやさしい女の子に描かれています。
また、子ウサギ Konrad は、リスやネズミよりも身体が大きいので(絵のように)皆を守ろうとするようなところのある男の子に描かれています。 このように、 Nina と Konrad の二人の性格描写がうまくなされていて、スウェーデン語版では、まるで、この作品の主役は、 Nina と Konrad の二人であるかのように描かれています。 ラストでは、原作にまったくない Nina と Konrad の会話を入れて、 Nina が Vet ni vad vi är? (「私たち(の関係)って、何だかわかる?」)と尋ねると、子ウサギ Konrad が Vi är vänner i ur och skur, så klart! (「ぼくたちは、雨が降っても、晴れても、友だちに決まってるじゃないか!」)と答えさせている。 変に勘ぐるならば、訳者は、まるで、この二人を結びつけようとたくらんでいるかのようなストーリーに仕上がっているのです。 どうも、訳者は Nina と Konrad の二人にだけ感情移入しすぎのようです。
日本語原作とスウェーデン語翻訳版の違いは、「自然と一体化して生きてきた日本人」と、「人間中心の西洋文明」の差が出ているのかもしれません。













